学生作品 Student Work
2024年度 卒業制作 Student Works 2024
2024年度 卒業制作 優秀作品 Student Interview 2024
LOBBY
浜崎 真帆 HAMASAKI Manaho
ファッションショー、展示|布、わた、ハトメ 他
W16800 × D9600 × H4500
LOBBYは、無臭だ。
そこに集まっちゃった人たちの、
装い、それからわずかな動き、
灰色の世界に強烈な匂いが発せられる。
そんなツンと、ニヤリとした、匂いに思いを馳せながら、ミシンで何往復にも刺繍を施す。
まっさらな布が、色をなし、形をなし、
「膨大な糸の集合体」は「人間」となる。
ラストは踊りくるって。
手の届かないオレンジジュース
梶田 ひかる KAJITA Hikaru
インスタレーション|シール、アクリル 他
W9600 × D6600 × H5200
スーパーの陳列棚に並ぶ紙パックのオレンジジュースを取ろうと手を伸ばすと、指先は紙パックではなく見えない壁にぶつかった。手に取ろうとしていたオレンジジュースは鏡に映った手前の商品の反射だった。
そこには確かに見えているのに、実際には存在していない。
私たちは普段、目の前に見えているものを確かに存在するとじて疑わない。しかしその確は時として揺らぎ、「見える世界」が必ずしも「在る世界」とは一致しないことに気付く。
その世界の間には、常に予測できない隔たりが存在する。
P L A Y
川嶋 菜々 KAWASHIMA Nana
インスタレーション|木材、紙 他
W4800 × D9000 × H500
ー つみきを並べよう
ー ボールを転がそう
ー ゴールを目指そう
“あそぶを通して、人と人がつながる”
BREEDING JOINT
竹林 駿 TAKEBAYASHI Hayao
プロダクト|レジン、金属 他
W7500 × D9600 × H2700
生物の交尾(生殖行為)は、繁殖という本能的かつ根源的な目的のもとで、多種多様な形態や仕組みを生み出してきた。この多様性は、生命がその環境に適応しながら進化を遂げてきた過程を如実に物語っている。たとえば、一部の生物は繁殖を成功させるために、特異な形状の器官や行動を進化させ、他の個体との結合や遺伝子の伝達を効率化している。これらの適応は、生命の柔軟性や創造性を反映しており、そこには機能的かつ美しいデザインの可能性が秘められている。本プロジェクトでは、この生物の生殖行為に着想を得て、形状や機能に独自の工夫を凝らしたジョイントデザインを模索している。生物学的な構造や動き、さらにそれらが持つ多様性にインスパイアされ、従来のデザインにはない新しいジョイントの形態を提案することを目指している。
CAT|オス猫のペニスには「陰茎棘」と呼ばれる無数のトゲが生えており、この構造がメス猫の排卵を促すための重要な仕組みとなっている。
PIG|豚の生殖器は、ネジとネジ穴のような構造を持つことで、受精の確率を高めている。
DOG|犬には頭球という膨らみが存在する。その膨らみを風船で再現し、シェルフへと昇華した。
34.993871,138.954450
千葉 海舟 CHIBA Kaishu
土
W4800 × D9000 × H500
それぞれが持っている土との記憶。
普段意識していなかった土の存在。
この作品をきっかけに少し思い出してもらえたら嬉しいです。
狭間に立つ
岩本 愛理/岡田 凛 IWAMOTO Airi / OKADA Rin
木材、スチレンボード 他
W7000 × D3500 × H3000
過去・現在・未来、秩序・無秩序
私達は、「過去と未来、そして『秩序と無秩序』の狭間に立つ私たち自身」をテーマに制作しました。
制作の過程で、私達の過去を振り返ったとき、整理のつかない感情や考えを抱えた「無秩序」な部分と、それを包み込む、学校や集団社会の中で生きるための「秩序」的な部分を併せ持っている私がいることに気づきました。
この作品では、その両面性を表現することを目指しました。この卒業制作は、私自身の内面や時間軸、そして社会との関わりを見つめ直し、それを形にしたものです。過去・現在・未来、秩序・無秩序といった対立する要素の独間に立つ自分自身を、ぜひ感じ取っていただければと思います。
Worker's
平田 爽一郎 HIRATA Soichiro
ファションショー|布、Tattoo 他
W9340 × D5220 × H3000
近年、私は人々から大きな無気力を感じます。
知りたい物、欲しい物は容易に手に入り、完璧な物を当たり前のように認知し、
営みが簡略化していくこの世の中で、人々は大事な事を忘れているのでは無いでしょうか。
人間が古来から行なってきた思考し、工夫する事の過程にある、人たらしめる行為に現代人は目を背け続けるのだろうか。
働く事、思考する事。
自らが身体を動かし出来上がる事柄の結果や過程の中にある疲れや苦しみの裏側に本質的な幸福が待っているのではないでしょうか。
SAIREI
浅井 芽衣 ASAI Mei
プロダクト|プロダクト毎に異なる素材・サイズ
日本文化は西洋文化の影響やインターネットの普及により廃れつつあり、特に若者が伝統に触れる機会が減少し、伝承の担い手が不足しています。伝統行事や工芸品が商業化やイベント化する中で、本来の文化の魅力を伝える方法が問われています。
中でも日本の祭りは、地域の願いやコミュニティを繋ぐ役割を果たしてきましたが、地域住民の流動化や高齢化により存続が危機に瀕しています。この課題を解決するには、地縁を超えて観光客を巻き込み、祭りを非日常空間として再定義することが重要です。観光による経済効果や若者の関心を通じて新たな担い手を育成する可能性があります。
そこで私は、47都道府県それぞれの祭りの個性を生かしたデザインのプロダクトを提案します。
このプロダクトを通じて、外国人観光客だけでなく、日本の若者日常の中に祭りの魅力やその背景にある文化を知るきっかけを提供し、祭り文化の再生と継承に繋げたいと考えています。
Indigo Imprint
川口 翠 KAWAGUCHI Midori
インスタレーション|藍、消しゴム、木材 他
W4230 × D9350 × H2700
1年間「伝統工芸の更新」をテーマにリサーチ・実験を行ってきた。伝統工芸は「昔ながら」のデザインを保存する一方、時代やニーズに応じた更新が必要だと考え、主要なモチーフに「藍染」を選定した。藍染はかって日用品として広<用いられてきた背景がある。そこで、現代の生活に密接した「100均製品」を活用して実験を行った。
100点以上の製品を染める中で、藍染と最も相性が良かった「消しゴム」を作品として展開した。誰もが使う普遍的なアイテムに藍染を施すことで、日用品に伝統工芸としての新たな価値を付与する試みである。藍染もまた新たな可能性を獲得し、より広く現代の生活に溶け込む道が開かれるのではないかと期待している。
寄生する家具
逢坂 彩 OSAKA Iroha
プロダクト|木材、金属、樹脂 他
W15225 × D10030 × H2700
私たちは無意識のうちに、規格化されたものづくりを享受し、生活している。生産効率や環境への負荷などが叫ばれる近年でも、生活のあちこちに見られる製品たちがいる。人々に選び抜かれた、いわば工業製品の生存競争で勝ち残ってきたものたちであると言える。しかし、それらの多くは規格化され、すでに見慣れてしまった姿かたちで街中に転がっている。寄生は、生物の進化の過程で生まれた機能であり、いまだ謎が多い生存戦略システムのひとつである。寄生生物は宿主なしで生きていくことはできない。共生という手段を選択しつつ、相手の体表に張り付き養分を吸い上げ、時に、体内に入り込んで脳を乗っ取る。彼らの行動や構造をリサーチし、見慣れた工業製品を「寄生する家具」として更新された姿を思考する。寄生生物にはさまざまな種が存在する。これらから共通して挙げられる要素はふたつ。ひとつは、他の生物から栄養や機能を持続的かつ一方的に収奪するという点。もうひとつは、生存に必要な栄養を抜き取るまで、宿主と共生するという点。これを今回の寄生の定義とした。また、生態調査の中で頻出した動詞をキーワードとし、家具の構造や意匠に反映させた。まさに踏み場もないような都市、東京でフィールドワークを行い、宿主を選定した。寄生相手の要素を引き出し、膨張させ、利用する家具。寄生する家具とそのシステムは、新たなデザインの姿なのである。
息衝く
滝沢 茉奈 TAKIZAWA Mana
パフォーマンス|木材、スチロール、針金 他
W9600 × D9600 × H3000
儘ならない私たち それでもどうか、また明日
呼吸がくるしい。足りないのか、吐き出しきれていないのか。
街はたくさんの呼吸をのみこんで、私たちは灯りの一粒になる。
心の内側を知らないまま、隣りあう。それぞれを歪めながら、重なりあう。
私たちは私たちのままで、共に生きていくことはできるだろうか。
意識して、息を吸う。ゆっくりと吐く。吸って、吐いて。吸って、吐いて。
『揺らめく記憶、漂う体温』
伊藤 琳/曽田 彩桜 ITO Rin / SODA Sakura
ファッションショー|トタン、ステンレスメッシュ、布
W10000 × D1000 × H2000、9号サイズ × 10体
触れられない存在が問いかけるもの記憶の中で、あの人の輪郭はぼんやりと揺れている。
確かにそこにいたはずの姿は、曖味な影となり、触れようとするたびに指の隙間をすり抜けてしまう。
けれどその中で、何度も私に問いかけてくるものがある。
それは、あの時伝わった体温。
あの人の生きた証は、曖昧な熱を持ち続け、姿形を変えながら今も漂い続けている。